LOGIN「エバルフさんの悪魔化が…解けたぞー!」
「「うぉぉぉ!!でかしたぞお嬢ちゃん!!」」 エバルフの悪魔化が解けたことで部下たちは喜び叫んだ。 グレンはミーナがエバルフの悪魔化を止めれた事を未だ信じられないのか唖然としていた。 「信じられんな…ただの人間が悪魔化を阻止するなど…」 (まったくだ…てめえですら悪魔化を阻止できた事ねえのによぉ) グレンの悪魔もグレンと同じくミーナの行動を感心した。 「…何てことだ…あの人間の悪魔化を…」 悔しそうな顔をしながらブツブツ独り言のように喋るロフィス。 そして一気に顔の表情を強面に変えて。 「よくも俺達の計画を…3年かけたこの計画を無駄にしやがったな…許さん…許さんぞぉぉぉ!人間どもぉぉぉ!!!」 ロフィスの声の大きさに全員再び戦闘体制に入ろうとした時。 「…!?…ガァッ!…」 ロフィスの指先から出た一筋の光線がエバルフの胸を貫き、エバルフの体は地面に倒れこんだ。 「エバルフさん!おい、ロフィス!いい加減にしろてめぇ!」 「いい加減にしろだと?こっちのセリフだクソ人間…。3年だぞ…こいつを悪魔化させんのにどれだけ苦労したか…許さんぞ。お前ら全員皆殺しにしてやるよ!」 ロフィスの腕と顔が変形し始めた。 黒い体は普通の悪魔と同じだがロフィスの変異は普通の悪魔と違い人間の面影を残したまま腕と顔が黒く変異し、髪は茶髪のままだった。 「あの人も悪魔の姿に…」 「落ち着けミーナ。危険だから後ろにいてろ。」 その姿があの時のシェスカと重なって見えたのかミーナは怯えていたがグレンに言われてエバルフの部下達の所に移動した。 そしてグレンはロフィスの方に再び顔を向け。 「…とうとう本性を表したな…」 「殺してやるよ…この姿にさせた事、後悔するがいい!」 まず最初に動いたのはロフィスだった。 ロフィスの怒りは極限状態なのが周りにも伝わってきて戦ってもいない部下達の何人かは反射的に一歩下がった。 ロフィスの拳がグレンの顔面を狙ってくるとグレンは大剣の剣脊でそれを受け止めた。 キィィィン!!! 金属同士がぶつかる音が鳴り響く。 「(こいつの拳は金属類に匹敵するのか!?大剣でガードしたのにビクともしねぇ!)」 しかしロフィスはグレンに考える間を与えず防がれたと分かった直後瞬間移動で一瞬でグレンの背後に移動する。 「遅いな!」 ロフィスは背後に移動した時に腰を右にねじると一気に逆方向へ回旋させ、右足でグレンを蹴飛ばした。 ちょうど下腹に直撃し、グレンはそのままの勢いで壁に激突した。 「ぐっ…なんて威力だ…」 グレンは蹴られて血が出ている下腹を抱えながら苦しい顔でロフィスを見た。 「言ったはずだ。俺は悪魔よりも上の獄魔だってよ。さぁ、お前はもう内臓のいくつかを潰した。死ぬのも時間の問だ…」 「誰が死ぬだって?ー反(リバース)魔法ー!」 すると蹴られた下腹の傷がどんどん治っていき、痛みが無くなると抑えてた手をどけた。 「残念だったな。これで潰れた内臓も修復して体力も回復した。」 そして再び剣を構えるグレン。 「これ以上お前と遊ぶつもりはねえ。ー黒炎よ、我に力を分け与えよー」 するとグレンが立ってる地面に黒い魔法陣が表れ、そこから黒炎が発生するとグレンの全身はその黒炎に纏われた。 全身を纏った黒炎はまるで死者を苦しめる地獄の業火のように燃え盛り、初めて見たエバルフの部下達は見てるだけで吐き気が出そうになってる者がいた。 「それが悪魔と契約して手に入れた悪魔殺しの炎か。確かにこの炎はまともに浴びると死ぬな。」 「安心しろ。熱さを感じる前に殺してやる。」 そしてグレンとロフィスは同時に瞬間移動でその場から消え、2人同時に同じ場所に移動した。 グレンは黒炎を纏った大剣を横に振ったがロフィスは再び瞬間移動でかわすと大剣は目の前にあった建物の壁を横一直線に斬りつけた。 そしてロフィスは再びグレンの後ろに移動すると今度は爪を伸ばして胸を貫こうとした。 「貰っ…」 ガッ…!! 「ブフォ…!」 ロフィスは爪で刺そうとした瞬間グレンは大剣を握っていない右腕の肘打ちでロフィスの上顎にヒットした。 鼻からボタボタと血が流れて判断が鈍ったロフィスを今度は光属性の魔力を右足に纏い、体を右回転させると背後にいるロフィス目掛けて高速の蹴りをお見舞いする。 ロフィスに当たった瞬間ロフィスは反対方向の建物に激突し、建物はその威力によって半壊した。 「…すごい、これが…紅の悪魔祓いの力なのか…ゲホゲホ!…」 「…!?エバルフさん!起き上がらないで下さい!」 さっきまで瀕死状態だったエバルフは起き上がろうとすると血が喉に詰まっていた咳き込むと血が出てきて部下は慌てて止めに入る。 飛ばされたロフィスは半壊した建物からゆっくりと現れると口から黒い血を吐き捨て、肩をコキコキ鳴らした。 「この力はもはや悪魔の域を超えてやがる。獄魔…いや、あいつの中にいる奴はそれ以上かもしれん…」 「何1人でブツブツ言ってる?」 そしてグレンは光の移動系魔法によって一瞬でロフィスの目の前に詰め寄り、再び高速の蹴りを入れようとした。 しかし、ロフィスは蹴りが来ることを分かっていたのかしゃがんでかわし手のひらに黒い魔力の塊をグレンの腹にぶち込んだ。 「ぐっ…」 「…だが、いくらお前が強くても動きは単調すぎるから予測しやすい。」 そして瞬間移動でグレンの背後に表れ再び黒い魔力を作った。 グレンはそれに気づいて避けようとしたがまたまた避ける方向が分かっていたのかその方向に移動し顔面に塊をぶち込んだ。 「そっちに避けることも想定内だ。…おっと、逃げんなよ!」 距離を保とうとしたグレンは瞬間移動でロフィスから離れるがロフィスもその場所に移動し、同じように魔力の塊を腹めがけてぶつけた。 「ぐはっ…!」 「どうした?こんな程度かよ!ホラ!ホラ!ホラよ!」 グレンはロフィスの両手から生産される何発もの魔力の塊をぶつけられた。 そして最後の塊を喰らうと膝を地面につけた。 「紅のやつが押されてますよ!」 「…ロフィスの予知能力か。さっきから紅は攻撃を避けようとしてるが動きを全部ロフィスに読まれてやがる。」 「その通り!俺の予知能力は120%の確率で当たる。ただ、1分程度先の未来なら何度でも見れるが1年以上先の未来は一瞬しか見れない。…3年前も…」 ロフィスは自分の能力をエバルフ達に一通り解説するとエバルフの方を向きながら言った。 「…お前が悪魔に堕ちた姿も見た!」 「…なん…だと?どういうことだ、ロフィス!?」 「どういうも何も、そのためにわざわざ俺はお前の故郷に悪魔を送り込んで襲わせたんだよ。そして、悪魔をを殺してるように見せかけて俺が……」 一呼吸おいた後ロフィスはとんでもない事を口にした。 「…俺が…お前の妹を殺した!お前を絶望させるためにな!」 そう言うとロフィスの体は獄魔の姿から3年前にエバルフの妹を殺した悪魔祓いの姿になった。 ロフィスが変身した姿に全員驚きを隠せなかったがこの中では1番エバルフが驚き、途切れ途切れに口を開いた。 「お前は…あの時…の…」 「ふっ…その通り。俺こそがお前の妹を殺した悪魔祓い…否、このロフィス様だよぉ!おいおい、そんな顔したらまた…絶望させたくなるじゃんよ!」 ロフィスは最初の方だけ悪魔祓いの真似事をするがロフィスと名乗る部分から素の自分を出して喋った。 エバルフの頭の中には3年前のあの妹と部下を殺された光景が蘇り、目の前が真っ暗になった。 「あはははは!そうだ!お前ら弱い人間など絶望し悪魔化すればいいのだ!」 「弱いのはお前らだ、クソ悪魔!」 あざ笑うロフィスを斬りつけようとするグレン。 ロフィスはそれを瞬間移動でかわした。 「弱い?俺たち悪魔がか?笑わせるな!そういうのは俺に勝ってから言いやがれ!」 再び2人は戦いを始めるがロフィスはグレンの攻撃パターンを予知できるため戦いは圧倒的にロフィスが優勢であった。 「まずい、ロフィスのやつが押してるぞ!」 「このままじゃ紅のやつ負けるぞ…!」 「安心しな!こいつを殺したら次は何の役にも立たんお前らを殺してやるからよ!」 ロフィスは部下たちの言葉が耳に入ったのかグレンの攻撃をかわしながら返答する。 そして瞬間移動で避け続けてると急によけるのをやめてグレンのみぞおちに肘打ちを食らわす。 「グオッ……!」 あまりの痛みに腹を抱え込んだ。 そんなことはお構いなしにロフィスはグレンの後頭部を踏みつけた。 「ヤバイ!紅がやられてしまうぞ!」 「このままじゃ俺たちも…!」 エバルフは絶望していた。 ー俺は、俺は結局何も出来ないのか…? 本当に自分でも情けない。やっと妹の仇が目の前にいるのに……目の前の敵が強大すぎて……怖くて立ち上がれない。 あぁ、本当に情けない。 やはり、このお嬢ちゃんの言う通りだな。 こんな弱い騎士、いない方が……。 「エバルフさん…エバルフさん!」 気落ちしてるエバルフの目の前で女の子が呼ぶ声が聞こえる。 「…お、お嬢ちゃん…!ど、どうした?」 「どうしたじゃない!グレンがやられそうなの!お願い!力を貸して欲しいの!」 ミーナは目に涙を浮かべながらエバルフに助けを求める。 しかし、エバルフは。 「…すまない、俺は…俺には人を守ることが出来ない。どうせ俺が行ったからって何も変わることはない。ロフィスの予知能力で俺に気づいて殺されるだろう…そんなくらいならいっそのこと……」 パァァン! その瞬間、周りに乾いた音が鳴り響きエバルフの頬に痛みが走った。 ミーナがビンタしたからだ。 12騎士長がまさか一般の人に殴られるなどと思いもしなかったのか部下たちは目が飛び出るくらい驚いた。 「何言ってるのよ…今この最悪な状況を変えなければみんな死んでしまうのよ!?」 「…だから俺が出ても助けられ…」 「それに、もしここで死んでも妹さんは喜んではくれませんよ!あなたの言っていたヒーローは何もしないまま死んだのかって思われるだけです!」 「………」 何も言わないエバルフにミーナは最後に言った。 「…お願いです…もうあなたしかいないんです!」 その瞬間のミーナが妹と重なって見えたのか胸が熱くなった。 ヒーロー!騎士団カッコいい!! こっ、この声は… 昔妹が言った言葉が脳内に蘇った。 ー……ありがとう、妹よ。お兄ちゃん今からカッコよくなるから天国で見ててくれよ! そしてエバルフは右足付近に置いていた剣を再び持った。 「おらっ!どうした?もう終わりか…大した事ねぇな!」 「ぐっ…ガァァ!!」 ロフィスは地面に倒れているグレンを容赦なく踏んづけたり腹を蹴ったりしていた。 「あーぁ。もう飽きちゃったなー。」 するとロフィスは黒いローブを着た悪魔祓いの姿から獄魔状態のロフィスに変異した。 「反抗してこなきゃ楽しくねーだろーがよ!」 ロフィスはさっきよりも発達した足の筋力で腹を蹴っ飛ばし、グレンの体はゴロゴロと勢いよく転がっていった。 「(くそっ…このままじゃ…)」 「そろそろ止めだよ…じゃあねー」 ロフィスはグレンの顔を踏み潰そうと思い切り右足を上げた。 その瞬間、ロフィスの周りに突風が発生した。 「…なっ、なんだ!?」 シュパッ! 「うっ、うわぁぁ!!」 その突風の風圧によって鎌鼬が起こると体を支えていたロフィスの左足を斬ったためそのまま地面に転倒してしまった。 「なっ、なんだこれは!予知できなかった…一体誰がやりやがっ…。」 その突風を起こしたのはロフィスから少し離れた位置から剣を握って構えている男。 ー12騎士長のエバルフ・シュロン。 その周りから出るオーラは憎しみと復讐に囚われていたあのエバルフではない。 仲間を死ぬ気で救うヒーローの姿であった。 「うぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして風魔法で瞬発力とスピードを底上げし、ロフィスに迫る。 そして倒れたロフィスの胸を自分が持ってる剣で地面ごと突き刺し、身動き出来ない状態にする。 ロフィスの口から大量の黒い血が吹き出た。 「ごっ…がぁ…なぜお前ごときが…俺を…」 「今だ、紅の!」 膝をついてたグレンはエバルフが作った最高のチャンスを機に立ち上がると拳の上に魔法陣を発生させた。 「人間にしちゃ上出来だ!」 そして魔法陣を発生させた状態の拳でロフィスの顔面を殴りつけた。 そこから勢い良く黒炎が発生し、ロフィスは動けないままもがき苦しんだ。 「ぐぁぁ!…ぁああああああ!!この…俺が…悪魔祓いだけでなく…人間に…やられる…と…は…予想外…」 どんどん燃えてチリになりかかっているロフィス。 するとエバルフは言った。 「お前は俺を弱者と判断し、反撃する事を想定してなかった。それが仇となって予知できずやられた。なんでも思い通りになると思うな、悪魔め。」 「…くそ、こんな…こんなァァァ!!…」 そしてロフィスは燃え尽きてチリになっていった。 「グレン!」 ロフィスが消えると離れていたミーナは全身傷だらけのグレンのそばにかけつけた。 「別に何ともない。俺はこんな程度じゃ死ぬことはない。」 「分かってるわよ、そんなことあなたと一緒にいれば。ほら、手当するわよ!」 「いいって言ってるだろ…ったく、おせっかいな女だ。」 「おせっかいで結構よ。ほら、顔だして!」 手当しようとグレンの顔を自分の方に向けるミーナに鬱陶しく感じるグレン。 その光景を見て2人が可愛らしく思えたのか部下たちはクスクスと笑う。 しかし、エバルフは戦いが終わっても浮かない顔をしていた。 ー妹よ、今の状況を天国で見てるならどう思ってるだろうか。俺はこれで良かったのか。憎しみを糧に生きていた俺はこれから騎士団にいてもいいのか。 っと心の中で思っていたエバルフ。 「お兄ちゃん、カッコいい!ヒーローみたいだよ!」 「…え?」 エバルフは声が聞こえて振り返った。 「…気のせいか…今一瞬妹の声が聞こえたような…」 ーお兄ちゃん!騎士団頑張ってね! 再び声が聞こえたが今度はエバルフの脳内に響いた。 この声は、やはり妹なのか。 しかし、どこからも声が聞こえない。 もしかしたら天国から話しかけてる…わけないか。 しかし、それに返事するようにエバルフは心に念じかけた。 …そうだな、…お前に言ったようにお兄ちゃん、ヒーローのような騎士団に近づけるよう頑張るから。天国から応援頼むぞ! 心に念じても妹からは返事は返ってこないがエバルフの妹は天国でこう思ってるはずです。 「頑張って、騎士団(お兄ちゃん)。」ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面
悪魔に襲撃されたクレーアタウン。 アスモディウス達との戦闘により、平和だった町の殆どの建物は半壊している。 今すぐ普通の生活に戻れそうには無かった。 ゴウシが東の大国ノームに救助を要請したお陰で、大型のバスの様な魔力式四輪駆動車が到着。 その中から現れたのはノームの救護隊員達であった。 救護隊員達は生き残ったクレーアタウンの人達を誘導し、自分たちが乗ってきた四輪駆動車の中に乗せていく。 クレーアタウンが復興するまでは東の大国が責任を持って町の人達を守るつもりだった。 アガレフという父親を失ったミーナと、母親のリーナ。 リーナはまだ立ち直れず座りながら俯いていた。 無理もない。17年間、愛して待ち続けた夫が目の前で跡形もなく消えたのだ。 簡単に立ち直れる筈が無い。 そんなリーナの側にミーナはつき、一緒に横に座っていた。 一方カイルはエミルの隣に立ち、目の前にはライク、ニケル、フィナが順に並んで2人と対面していた。 「改めてお久しぶりね、カイル君。」 フィナはカイルを見て挨拶した。 さっきはミーナの父親の件もあり、互いにそれどころでは無く再会の挨拶をする間が無かった。 「まさか、フィナさんが2人と一緒に居たなんて知りませんでした。」 カイルはシルフで別れた筈のフィナが、月の民である元盗賊のライクとニケル。2人と行動を共にしてる事に驚いていた。 するとフィナはエミルの方に視線を移す。 「あなたがライクとニケルが言ってたエミルさんね。私はフィナ・プロミネンス。宜しくね。」 「こちらこそです。エミル・ウォーマリンと言います。……ライクとニケルも、久しぶりね。」 少しよそよそしく2人に言うエミル。 一応、ティラーデザートでエミルはライク達に「裏切り者扱い」されて離れる事になった。 当然エミルも言われて当然だと思っている。 カイルと戦ってくれた時は必死だった事もあって、あまり気にしていなかった。 しかし今になって冷静になると、どんな顔をして2人を見れば良いのかエミルは分からなかった。 そんなエミルの悩みを掻き消すかのように2人は笑いながら。 「エミルも、元気そうで何よりだよ。」 「けっ!何辛気くせー顔してんだよ!」 ニケルは笑顔でそう言うと隣のライクは頭に手を組みな
場面は変わりミーナに会わせて欲しいと訴えるリーナを抱えながら、フィナはライク達の後を追っていた。フィナの"陽"の力は短距離で時間をコントロールして戦うのに向いている為、ライク達に比べると遠くへ移動するのはそれ程速くは無かった。それでもフィナの足は早く、時間のコントロールによってミーナ達とは10kmほど離れていたが5分くらいで近くの地点まで辿り着いていた。「リーナさん!もうすぐですからね!」「ありがとうございます!」フィナが走っていると、少し離れた場所で巨大な光の爆発が起こったのが見えた。「あの爆発は一体…」「…ミーナ。」その時は丁度、アスモディウスに魔力操作"極"の力によって光の爆発を起こした時だった。目の前で起きた光の爆発を見たフィナとリーナ。リーナはフィナの背中に抱えられたままミーナの無事を祈り、そのまま彼女達の戦場へと近づいていく。バタッ。ミーナはうつ伏せのまま地面に倒れ、持っていた刀が右手から離れる。刀の刀身が地面に当たると、当たった部分から刀身がバラバラに崩れていった。魔力操作"極"で刀に膨大な魔力を込めた事で、刀に大きな負担が掛かっていたからだ。ミーナのその姿を見たアスモディウスは先程まで息を切らして焦っていたが、この光景を見るや急にニヤケ始めた。「ミーナァァァ!!!」「ミーナちゃん!」エミルとカイルは走りながら倒れたミーナの方へと走る。しかし、魔力も使い果たし体力の限界だったエミルは早く走れない。「クソ!俺も身体が痛くて動けねぇ!」「まずい!あのままじゃ、あの子が殺されてしまう!」ライクとニケルも同様、雷神と風神の反動とカイルから受けたダメージにより今は動ける状態では無い。辛うじて生きながらえたアスモディウスがミーナの1番近くに居た事で、ミーナは絶対絶命のピンチに陥っていた。「…あれぇ?もしかして、動けない感じ?私、ヤバいと思ったけど。」するとアスモディウスは指をパチンと鳴らした。死者蘇生で蘇った死者達を操る合図だ。ミーナの消滅の光はアスモディウスのみを対象にしていた為、死者達はそのまま残っていた。「勝負では私に勝ってたのに、なんとまあ……残念だったね!小娘がぁ!戦場で気絶する方が悪いんだよ!恨むなら、自分の間抜けさを恨みなさい!」「おい、役立たずの屍(しかばね)共!この小娘をグチャグチャにし
するとベルゼバブが出てきた方とは逆の奥の方から別の足音が聞こえてくる。あの時は魔法が使えなかったから分からなかったけど、ただならぬ魔力を感じる。しかし、悪魔の様な不気味な魔力では無い。温かみのある優しい光の様な魔力。その魔力を持った人…人では無いが、ミーナとベルゼバブが居る方へ歩いてきた。「久しいのう。ミーナ。」その姿は以前ミーナと精神世界で対面した時に見せた、ミーナと全く同じ姿の状態のエル(ミカエル)が暗闇から現れた。「あなたはエル…」「な、何で!?何で君が居るの?大天使・ミカエル!」ベルゼバブはミーナの姿をしたミカエルを見て驚きを隠せなかった。普段無邪気に相手を挑発したりするベルゼバブが焦りを感じている。悪魔にとって天使という存在は、嫌悪を抱くと同時に恐怖の対象でもあった。ベルゼバブに視線を移すミカエル。「そなたはベルゼバブ。妾はこのミーナと共存してるのじゃ。…この姿じゃ、ややこしいな。」そう言うとミーナの姿をしたミカエルは変化していく。そしてミカエルは姿を見せた。白銀の長い髪を風に揺らし、透き通る青い瞳で静かに微笑む天使の翼の女性。白を基調とした和の装いには淡い金の煌めきが散り、腰紐と房飾りが上品に揺れる。大きな白い翼を広げたその姿は、神域の気配そのものだった。「それが本当のエルの姿…本当に天使みたいだ…」ミーナは天使の姿のミカエルに驚いていたが、その神々しい姿に見惚れいた。「天使みたいでは無い。妾は天使なのじゃ。」ニコリと微笑みながらミカエルは言った。柔らかいその表情と立ち姿はその名の通り天使と呼ぶに相応しく、一つ一つの言葉や所作が周囲をまるで温かく包み込むかの様である。その温もりは暗闇の精神世界が天国の様に思える程だ。「大天使がミーナの中に居たなんて…まさかとは思うけど、君の力を彼女に貸し与えてたりしないよね?」「妾の"恩恵"の力か?ええ、そうじゃ。妾の力を与えた事でミーナは力を使えるぞ。」何てこった…と言わんばかりの顔をしながらベルゼバブは手を頭に抱えた。何故ベルゼバブが頭を抱えてるのか分からないミーナ。「え、何か不都合な事でもあるの?」「不都合といえば、不都合かな…天使は僕達悪魔の魔力を凌駕するからね。何も対策しなければ、悪魔は天使によって一瞬で消されてしまう。」ベルゼバブの言う通り、一度
ミーナ達3人が戦っていたその頃。東の大国で元八握剣(やつかのつるぎ)であったギンジはミーナの母であるリーナを連れながら、他にも生き残ってるであろうクレーアタウンの市民を探していた。生き残っていた市民は結構居た為、全員助けに来てくれたギンジの後ろをゾロゾロと歩いて着いて行く。そんな中で思わぬ人物に出会った。その人はギンジにとってあまり会いたく無い人物。「ギンジ!お前、こっちに来てたのか!?」の太く低い声の主である彼の名前はゴウシ。八握剣(やつかのつるぎ)の土刃(どじん)と呼ばれる男である。見た目年齢が30代後半は過ぎてるであろうゴウシは、ベリーショートの茶髪に整えられた茶髭。八握剣のバンジョウやスイゲツと同じ侍の様な服装をしているが、体型はガタイが良いと言うよりも巨漢に近かった。丸太の様に太い腕に、武器は刀では無く斧を背中に担いでいた。「ゴウシ…そういえばスイゲツの奴が言ってたな。」ギンジはゴウシの事を嫌そうな目で見ながら東の大国ノームでスイゲツが言っていた事を思い出した。「はい!先程八握剣の土刃、ゴウシ様から連絡がありまして。最近東の近隣の国が悪魔に襲撃されているとの事です!」スイゲツがあの道場で報告した内容の発信源は確かゴウシであった。市民を助ける為の人手が足りない現状ではとても頼りになる存在であるが、国を出るつもりのギンジにとっては不都合でしか無かった。どうせこいつも八握剣(やつかのつるぎ)に戻れって言うに違いない。「お前が居てくれて良かった!ギンジ、俺もこの町の人達を助けたい!だから協力させてくれ!」しかし、ゴウシから出てきた発言はギンジの予想とは違っていた。「何だ、俺の事を引き留めようとしないのか?」「いや、今はそんな場合ではないだろう?そりゃ、お前には戻ってきて欲しいが、それよりも先に今はやるべき事があるだろ。」ゴウシは八握剣の中でも正義感が人一倍強く、真っ直ぐな性格であった。その正義感に加えて人々の為に今自分に何が出来るのか、常に考えて行動出来る人である。しかし、不可解な事が一つあった。「確かゴウシが居る場所はここよりも数km離れていた場所だ。どうやってここまで来た?」高速移動や転移魔法を使えないゴウシには一瞬でここまで来る移動手段が無かった筈だ。ーーどうやってここまで来た?こいつはこの町には居ないと思