LOGIN「エバルフさんの悪魔化が…解けたぞー!」
「「うぉぉぉ!!でかしたぞお嬢ちゃん!!」」 エバルフの悪魔化が解けたことで部下たちは喜び叫んだ。 グレンはミーナがエバルフの悪魔化を止めれた事を未だ信じられないのか唖然としていた。 「信じられんな…ただの人間が悪魔化を阻止するなど…」 (まったくだ…てめえですら悪魔化を阻止できた事ねえのによぉ) グレンの悪魔もグレンと同じくミーナの行動を感心した。 「…何てことだ…あの人間の悪魔化を…」 悔しそうな顔をしながらブツブツ独り言のように喋るロフィス。 そして一気に顔の表情を強面に変えて。 「よくも俺達の計画を…3年かけたこの計画を無駄にしやがったな…許さん…許さんぞぉぉぉ!人間どもぉぉぉ!!!」 ロフィスの声の大きさに全員再び戦闘体制に入ろうとした時。 「…!?…ガァッ!…」 ロフィスの指先から出た一筋の光線がエバルフの胸を貫き、エバルフの体は地面に倒れこんだ。 「エバルフさん!おい、ロフィス!いい加減にしろてめぇ!」 「いい加減にしろだと?こっちのセリフだクソ人間…。3年だぞ…こいつを悪魔化させんのにどれだけ苦労したか…許さんぞ。お前ら全員皆殺しにしてやるよ!」 ロフィスの腕と顔が変形し始めた。 黒い体は普通の悪魔と同じだがロフィスの変異は普通の悪魔と違い人間の面影を残したまま腕と顔が黒く変異し、髪は茶髪のままだった。 「あの人も悪魔の姿に…」 「落ち着けミーナ。危険だから後ろにいてろ。」 その姿があの時のシェスカと重なって見えたのかミーナは怯えていたがグレンに言われてエバルフの部下達の所に移動した。 そしてグレンはロフィスの方に再び顔を向け。 「…とうとう本性を表したな…」 「殺してやるよ…この姿にさせた事、後悔するがいい!」 まず最初に動いたのはロフィスだった。 ロフィスの怒りは極限状態なのが周りにも伝わってきて戦ってもいない部下達の何人かは反射的に一歩下がった。 ロフィスの拳がグレンの顔面を狙ってくるとグレンは大剣の剣脊でそれを受け止めた。 キィィィン!!! 金属同士がぶつかる音が鳴り響く。 「(こいつの拳は金属類に匹敵するのか!?大剣でガードしたのにビクともしねぇ!)」 しかしロフィスはグレンに考える間を与えず防がれたと分かった直後瞬間移動で一瞬でグレンの背後に移動する。 「遅いな!」 ロフィスは背後に移動した時に腰を右にねじると一気に逆方向へ回旋させ、右足でグレンを蹴飛ばした。 ちょうど下腹に直撃し、グレンはそのままの勢いで壁に激突した。 「ぐっ…なんて威力だ…」 グレンは蹴られて血が出ている下腹を抱えながら苦しい顔でロフィスを見た。 「言ったはずだ。俺は悪魔よりも上の獄魔だってよ。さぁ、お前はもう内臓のいくつかを潰した。死ぬのも時間の問だ…」 「誰が死ぬだって?ー反(リバース)魔法ー!」 すると蹴られた下腹の傷がどんどん治っていき、痛みが無くなると抑えてた手をどけた。 「残念だったな。これで潰れた内臓も修復して体力も回復した。」 そして再び剣を構えるグレン。 「これ以上お前と遊ぶつもりはねえ。ー黒炎よ、我に力を分け与えよー」 するとグレンが立ってる地面に黒い魔法陣が表れ、そこから黒炎が発生するとグレンの全身はその黒炎に纏われた。 全身を纏った黒炎はまるで死者を苦しめる地獄の業火のように燃え盛り、初めて見たエバルフの部下達は見てるだけで吐き気が出そうになってる者がいた。 「それが悪魔と契約して手に入れた悪魔殺しの炎か。確かにこの炎はまともに浴びると死ぬな。」 「安心しろ。熱さを感じる前に殺してやる。」 そしてグレンとロフィスは同時に瞬間移動でその場から消え、2人同時に同じ場所に移動した。 グレンは黒炎を纏った大剣を横に振ったがロフィスは再び瞬間移動でかわすと大剣は目の前にあった建物の壁を横一直線に斬りつけた。 そしてロフィスは再びグレンの後ろに移動すると今度は爪を伸ばして胸を貫こうとした。 「貰っ…」 ガッ…!! 「ブフォ…!」 ロフィスは爪で刺そうとした瞬間グレンは大剣を握っていない右腕の肘打ちでロフィスの上顎にヒットした。 鼻からボタボタと血が流れて判断が鈍ったロフィスを今度は光属性の魔力を右足に纏い、体を右回転させると背後にいるロフィス目掛けて高速の蹴りをお見舞いする。 ロフィスに当たった瞬間ロフィスは反対方向の建物に激突し、建物はその威力によって半壊した。 「…すごい、これが…紅の悪魔祓いの力なのか…ゲホゲホ!…」 「…!?エバルフさん!起き上がらないで下さい!」 さっきまで瀕死状態だったエバルフは起き上がろうとすると血が喉に詰まっていた咳き込むと血が出てきて部下は慌てて止めに入る。 飛ばされたロフィスは半壊した建物からゆっくりと現れると口から黒い血を吐き捨て、肩をコキコキ鳴らした。 「この力はもはや悪魔の域を超えてやがる。獄魔…いや、あいつの中にいる奴はそれ以上かもしれん…」 「何1人でブツブツ言ってる?」 そしてグレンは光の移動系魔法によって一瞬でロフィスの目の前に詰め寄り、再び高速の蹴りを入れようとした。 しかし、ロフィスは蹴りが来ることを分かっていたのかしゃがんでかわし手のひらに黒い魔力の塊をグレンの腹にぶち込んだ。 「ぐっ…」 「…だが、いくらお前が強くても動きは単調すぎるから予測しやすい。」 そして瞬間移動でグレンの背後に表れ再び黒い魔力を作った。 グレンはそれに気づいて避けようとしたがまたまた避ける方向が分かっていたのかその方向に移動し顔面に塊をぶち込んだ。 「そっちに避けることも想定内だ。…おっと、逃げんなよ!」 距離を保とうとしたグレンは瞬間移動でロフィスから離れるがロフィスもその場所に移動し、同じように魔力の塊を腹めがけてぶつけた。 「ぐはっ…!」 「どうした?こんな程度かよ!ホラ!ホラ!ホラよ!」 グレンはロフィスの両手から生産される何発もの魔力の塊をぶつけられた。 そして最後の塊を喰らうと膝を地面につけた。 「紅のやつが押されてますよ!」 「…ロフィスの予知能力か。さっきから紅は攻撃を避けようとしてるが動きを全部ロフィスに読まれてやがる。」 「その通り!俺の予知能力は120%の確率で当たる。ただ、1分程度先の未来なら何度でも見れるが1年以上先の未来は一瞬しか見れない。…3年前も…」 ロフィスは自分の能力をエバルフ達に一通り解説するとエバルフの方を向きながら言った。 「…お前が悪魔に堕ちた姿も見た!」 「…なん…だと?どういうことだ、ロフィス!?」 「どういうも何も、そのためにわざわざ俺はお前の故郷に悪魔を送り込んで襲わせたんだよ。そして、悪魔をを殺してるように見せかけて俺が……」 一呼吸おいた後ロフィスはとんでもない事を口にした。 「…俺が…お前の妹を殺した!お前を絶望させるためにな!」 そう言うとロフィスの体は獄魔の姿から3年前にエバルフの妹を殺した悪魔祓いの姿になった。 ロフィスが変身した姿に全員驚きを隠せなかったがこの中では1番エバルフが驚き、途切れ途切れに口を開いた。 「お前は…あの時…の…」 「ふっ…その通り。俺こそがお前の妹を殺した悪魔祓い…否、このロフィス様だよぉ!おいおい、そんな顔したらまた…絶望させたくなるじゃんよ!」 ロフィスは最初の方だけ悪魔祓いの真似事をするがロフィスと名乗る部分から素の自分を出して喋った。 エバルフの頭の中には3年前のあの妹と部下を殺された光景が蘇り、目の前が真っ暗になった。 「あはははは!そうだ!お前ら弱い人間など絶望し悪魔化すればいいのだ!」 「弱いのはお前らだ、クソ悪魔!」 あざ笑うロフィスを斬りつけようとするグレン。 ロフィスはそれを瞬間移動でかわした。 「弱い?俺たち悪魔がか?笑わせるな!そういうのは俺に勝ってから言いやがれ!」 再び2人は戦いを始めるがロフィスはグレンの攻撃パターンを予知できるため戦いは圧倒的にロフィスが優勢であった。 「まずい、ロフィスのやつが押してるぞ!」 「このままじゃ紅のやつ負けるぞ…!」 「安心しな!こいつを殺したら次は何の役にも立たんお前らを殺してやるからよ!」 ロフィスは部下たちの言葉が耳に入ったのかグレンの攻撃をかわしながら返答する。 そして瞬間移動で避け続けてると急によけるのをやめてグレンのみぞおちに肘打ちを食らわす。 「グオッ……!」 あまりの痛みに腹を抱え込んだ。 そんなことはお構いなしにロフィスはグレンの後頭部を踏みつけた。 「ヤバイ!紅がやられてしまうぞ!」 「このままじゃ俺たちも…!」 エバルフは絶望していた。 ー俺は、俺は結局何も出来ないのか…? 本当に自分でも情けない。やっと妹の仇が目の前にいるのに……目の前の敵が強大すぎて……怖くて立ち上がれない。 あぁ、本当に情けない。 やはり、このお嬢ちゃんの言う通りだな。 こんな弱い騎士、いない方が……。 「エバルフさん…エバルフさん!」 気落ちしてるエバルフの目の前で女の子が呼ぶ声が聞こえる。 「…お、お嬢ちゃん…!ど、どうした?」 「どうしたじゃない!グレンがやられそうなの!お願い!力を貸して欲しいの!」 ミーナは目に涙を浮かべながらエバルフに助けを求める。 しかし、エバルフは。 「…すまない、俺は…俺には人を守ることが出来ない。どうせ俺が行ったからって何も変わることはない。ロフィスの予知能力で俺に気づいて殺されるだろう…そんなくらいならいっそのこと……」 パァァン! その瞬間、周りに乾いた音が鳴り響きエバルフの頬に痛みが走った。 ミーナがビンタしたからだ。 12騎士長がまさか一般の人に殴られるなどと思いもしなかったのか部下たちは目が飛び出るくらい驚いた。 「何言ってるのよ…今この最悪な状況を変えなければみんな死んでしまうのよ!?」 「…だから俺が出ても助けられ…」 「それに、もしここで死んでも妹さんは喜んではくれませんよ!あなたの言っていたヒーローは何もしないまま死んだのかって思われるだけです!」 「………」 何も言わないエバルフにミーナは最後に言った。 「…お願いです…もうあなたしかいないんです!」 その瞬間のミーナが妹と重なって見えたのか胸が熱くなった。 ヒーロー!騎士団カッコいい!! こっ、この声は… 昔妹が言った言葉が脳内に蘇った。 ー……ありがとう、妹よ。お兄ちゃん今からカッコよくなるから天国で見ててくれよ! そしてエバルフは右足付近に置いていた剣を再び持った。 「おらっ!どうした?もう終わりか…大した事ねぇな!」 「ぐっ…ガァァ!!」 ロフィスは地面に倒れているグレンを容赦なく踏んづけたり腹を蹴ったりしていた。 「あーぁ。もう飽きちゃったなー。」 するとロフィスは黒いローブを着た悪魔祓いの姿から獄魔状態のロフィスに変異した。 「反抗してこなきゃ楽しくねーだろーがよ!」 ロフィスはさっきよりも発達した足の筋力で腹を蹴っ飛ばし、グレンの体はゴロゴロと勢いよく転がっていった。 「(くそっ…このままじゃ…)」 「そろそろ止めだよ…じゃあねー」 ロフィスはグレンの顔を踏み潰そうと思い切り右足を上げた。 その瞬間、ロフィスの周りに突風が発生した。 「…なっ、なんだ!?」 シュパッ! 「うっ、うわぁぁ!!」 その突風の風圧によって鎌鼬が起こると体を支えていたロフィスの左足を斬ったためそのまま地面に転倒してしまった。 「なっ、なんだこれは!予知できなかった…一体誰がやりやがっ…。」 その突風を起こしたのはロフィスから少し離れた位置から剣を握って構えている男。 ー12騎士長のエバルフ・シュロン。 その周りから出るオーラは憎しみと復讐に囚われていたあのエバルフではない。 仲間を死ぬ気で救うヒーローの姿であった。 「うぉぉぉぉぉぉ!!!」 そして風魔法で瞬発力とスピードを底上げし、ロフィスに迫る。 そして倒れたロフィスの胸を自分が持ってる剣で地面ごと突き刺し、身動き出来ない状態にする。 ロフィスの口から大量の黒い血が吹き出た。 「ごっ…がぁ…なぜお前ごときが…俺を…」 「今だ、紅の!」 膝をついてたグレンはエバルフが作った最高のチャンスを機に立ち上がると拳の上に魔法陣を発生させた。 「人間にしちゃ上出来だ!」 そして魔法陣を発生させた状態の拳でロフィスの顔面を殴りつけた。 そこから勢い良く黒炎が発生し、ロフィスは動けないままもがき苦しんだ。 「ぐぁぁ!…ぁああああああ!!この…俺が…悪魔祓いだけでなく…人間に…やられる…と…は…予想外…」 どんどん燃えてチリになりかかっているロフィス。 するとエバルフは言った。 「お前は俺を弱者と判断し、反撃する事を想定してなかった。それが仇となって予知できずやられた。なんでも思い通りになると思うな、悪魔め。」 「…くそ、こんな…こんなァァァ!!…」 そしてロフィスは燃え尽きてチリになっていった。 「グレン!」 ロフィスが消えると離れていたミーナは全身傷だらけのグレンのそばにかけつけた。 「別に何ともない。俺はこんな程度じゃ死ぬことはない。」 「分かってるわよ、そんなことあなたと一緒にいれば。ほら、手当するわよ!」 「いいって言ってるだろ…ったく、おせっかいな女だ。」 「おせっかいで結構よ。ほら、顔だして!」 手当しようとグレンの顔を自分の方に向けるミーナに鬱陶しく感じるグレン。 その光景を見て2人が可愛らしく思えたのか部下たちはクスクスと笑う。 しかし、エバルフは戦いが終わっても浮かない顔をしていた。 ー妹よ、今の状況を天国で見てるならどう思ってるだろうか。俺はこれで良かったのか。憎しみを糧に生きていた俺はこれから騎士団にいてもいいのか。 っと心の中で思っていたエバルフ。 「お兄ちゃん、カッコいい!ヒーローみたいだよ!」 「…え?」 エバルフは声が聞こえて振り返った。 「…気のせいか…今一瞬妹の声が聞こえたような…」 ーお兄ちゃん!騎士団頑張ってね! 再び声が聞こえたが今度はエバルフの脳内に響いた。 この声は、やはり妹なのか。 しかし、どこからも声が聞こえない。 もしかしたら天国から話しかけてる…わけないか。 しかし、それに返事するようにエバルフは心に念じかけた。 …そうだな、…お前に言ったようにお兄ちゃん、ヒーローのような騎士団に近づけるよう頑張るから。天国から応援頼むぞ! 心に念じても妹からは返事は返ってこないがエバルフの妹は天国でこう思ってるはずです。 「頑張って、騎士団(お兄ちゃん)。」時は少し遡る。ここは東の大国。そして、上空から突然、北の大国本隊の魔導戦艦が50隻現れた場面に戻る。上空は朝方の筈なのに、その50隻の魔導戦艦によって空に浮かぶ雲の様に覆い尽くされる。世界が絶望の色に染まったかの様であった。「何で…北の大国には、グロードさんが居る筈なのに…。」上空を飛行する魔導戦艦を恐怖に満ちた目で見つめながら口を開くミーナ。「…グロードさんが…あり得ないよ。少なくとも、肉体的に何かあったとは考えられない。」「カイルの言う通りだ。あの人がやられる訳が無い。あるとすれば……」ネルでも持っていなかった情報。それは魔導戦艦の隠してある場所である。魔導戦艦の性能を知っていたネルは事前にその事を全員に伝えていたが、肝心の隠し場所まではネルでも把握しきれなかったのだ。当然といえば当然。軍事国家に限らずどの国でも兵器の国外流出は命取りとなる。その為、兵器はより見つかりにくい場所に隠しておきたいものだ。「グロードさんでも、奴らの兵器の隠し場所は見つけられなかったのか……分身の僕に告ぐ。魔導戦艦で、奴らに魔導砲・アステリアを放て。」ネルは先行部隊が乗っていた魔導戦艦を奪取した分身達に向け、無線機で命令した。すると、上空に飛行する1隻の魔導戦艦が50隻の魔導戦艦に向けて魔導砲・アステリアを放つ。しかし、放たれた魔導砲・アステリアは50隻の魔導戦艦に当たる事なく、霧散し消えていく。そう。本隊の魔導戦艦は全て無効魔力機構(アンチ魔力システム)が働いている為、魔力を凝縮した高出力のアステリアであってもそれらの攻撃を無効にする。攻撃を無効にするだけで、同じ様に魔導砲・アステリアは放つ事が出来る為、今度は本隊の魔導戦艦が同じ様に魔導砲・アステリアを放った。そしてネルが奪取した魔導戦艦は呆気なく破壊される。魔法が通じない上に、破壊力のある力を保有する。魔法社会においてこれ程脅威になる事はないだろう。正に、人という罪深き存在が生み出した負の産物である。「……こうなったら、僕がやるしか無いのか…。」「おい、待てよ!幾らネルでもあの数相手は無理だ!」「僕以外に誰がやるんだ?取り敢えず、擬似・ブラックホールで魔導砲を止める事は出来る筈だ。」「そんなのいつまでも保つ訳ねえだろ!?」「じゃあ、このまま黙って見てれば良いのかい!?」カイル
先行部隊が東の大国ノームの領空内に侵入する前に戻る。ここは北の大国よりも数千kmほど離れた地点。北の大国の先行部隊の魔導戦艦が東の大国へ攻め込む時期を見計らい、グロードはゆっくりと歩きながら進んでいた。[溢れ出る自噴の呪い]によって魔力が常に溢れ出てくるグロードは魔力を隠す事が出来ず、安易に近づけば北の大国にとってはそれだけで脅威となりうる。グロードが空間移動ですぐに北の大国に侵入しない理由は2つある。1つ目は、北の大国の中心都市部には高さ60mはある巨大な外壁が周囲を覆っており、その外壁には無効魔力機構(アンチ魔力システム)というものが働いている。無効魔力機構(アンチ魔力システム)とは、名前の通り魔法を無効にする力があり、空間移動などで外壁の内側に侵入する事を阻害する。魔法で無から作られた炎や雷など、魔力に満ちた攻撃は全て通らない。この外壁は他国から攻められても、中心都市部にある軍事施設の破壊や技術の流出を防ぐ為に作られた。その為、北の大国は今まで戦争によってここ何100年も危機的状況に陥った事がない。2つ目の理由。これはあくまで予想の範囲内である。先行部隊の魔導戦艦を空間移動で転移させた後、しばらくの間は本隊の魔導戦艦を空間移動させる事が出来ないのだと考えた。これは魔力のエネルギーでは無く、転移させる為のシステムの負荷量の問題だと考える。巨大な魔導戦艦を転移させるにはそれだけシステムに大きな負荷が掛かる。これは機械が許容範囲を超えた際に起こる過熱状態(オーバーヒート)に近い。それを冷却する時間を確保する為、先行部隊を送り込んだ後、本隊を送り込ませるのに時間が掛かるのだと、グロードとネルは考えた。もしグロードが最初から空間移動で北の大国の領域内に現れた場合、ベリエルが作戦を変えて本隊を先に空間移動させる可能性がある。そうなれば東の大国は終わりだ。本隊は先行部隊である特殊特攻部隊がそのまま50隻分攻めてくるのと同じ戦力だとネルは言っていた為、これだけでも圧倒的な力である事が分かる。だからこそ、グロードは慎重に足を運んだ。魔力で自分が見つからない様に。そしてしばらくするとネルから無線で連絡が来た。「グロードさん。北の魔導戦艦が現れました。2隻です。僕達の予想通り、奴らは先に先行部隊を送り込んできました。」「了解。じゃあ、
そして現在。アルバスはネルによって地上に叩き落とされ、クレーターの出来た地面の中心に仰向けで倒れていた。自分の過去を思い出しながら、上空を見つめている。ーー何故、自分はこれ程何も思わなくなったのか?過去を思い出してもその理由が理解出来ずにいたアルバス。今まで他人に言われた事が正解だと思い自分で考えて生きてこなかった。正解と不正解の基準も、全て上の立場の人に委ねた結果、自分の生き方の何が間違いなのかを見つける事が出来なかった。そして先程戦っていたネルが上空から空間移動で倒れたアルバスの前に転移して現れる。ネルはアルバスを見下ろしていた。「何してるの?立ち上がらないのかい?」抵抗の意思を全く示そうとしないアルバスにネルは聞いた。「……もう身体を動かせない。これ以上の抵抗は無意味。」北の大国の理念では「敗北よりも逃亡や降伏の方が恥ずべき行為」である為、アルバスの性格上動けるなら死ぬまで戦うだろう。しかし、そうしないのは彼の言う通り、本当に身体を動かせないからだろう。自分の身体的な状態を把握してるからこそ、無理な抵抗はしないのだ。「今僕に負けそうなのに、悔しく無いのかい?僕に対して、腹が立たないのかい?」ネルは更にアルバスに対して質問を続ける。「……」「答えなよ。どうせ今の君には何も出来ない。何も出来ないなら、せめて僕と話をしたらどうなんだ?」「もう一度、さっきの質問をするよ。君は、何の為に戦ってるんだい?」黙り込もうとするアルバスに問い掛け続けるネル。自分の敵になる人は容赦なく攻撃してきたネルであるが、何故かアルバスにだけ対話を求め続ける。何故なのか?「君の事を見てると、何も考えずに人を殺して自分を満たそうとしていた昔の僕自身を思い出す。」「僕はある人に言われた。それは愛情の代わりになる何かを満たす行為だと。」それはシルフでグレンに言われた事であった。(第20話参照)悪魔祓いは皆、人間性を捨てる事により強さを得ているのだと思っていたネルは、グレンの事を自分と同じだと言っていた。しかし、グレンは違った。愛する者を失った悲しみと自分の無力さを思い知った為、強さを得たのだ。強さを得て満たそうとしていたのは、あの時のネルだけであった。ネルは与えられなかった愛情の代わりを強さで埋めようとしていた。強くなれば与えられなかった
物心ついた頃から、アルバスの耳には両親が自分の事で喧嘩する声が残っていた。母親は泣きながら父親に向かって。「もう嫌!私にはあの子が何を考えてるのか分からない!」「おい、隣にアルバスが寝てるんだぞ?少し声のトーンを下げて。」「何であんたはそんなにも冷静でいられるの!?元はと言えば、あんたのその煮えくり返らない性格が子供にまで影響でたんでしょ!?」「そ、それは関係ないだろ?」父親は母親を宥めようとするが、母親のヒステリックは止まらない。「だって、言われないと何もしないんだよ?あの子。今日だって、トイレ行きたい筈なのに行きたいとも言わずに漏らして。」「ご飯だって、こっちが言うまで頂きますも言わないし。服も自分で着替えない…全部言わないと動こうとしないんだよ!?」「幾ら何でも、私が全部見張るのは無理よ!このままじゃ、あの子は……。」そう言って母親は机に突っ伏しながら泣きじゃくる。こうなってしまったらもうどうしようも無い為、父親は頭を悩ませていた。布団の中で声が聞こえてきたアルバス。まだ5歳くらいだった為、話を全て理解出来てはいないが、自分の事で両親が喧嘩してるのだと思うと、子供ながらに心を痛めた。「(僕がちゃんと出来ていないから、お母さんとお父さんが仲悪くなるんだ。)」この頃のアルバスは感情を出すのが苦手なだけで、状況に対して心の中で何かを思う事は出来ていた。そして両親が喧嘩しない為に、自分でも何かしようと考えていた。次の日の朝、アルバスは1人で着替えようとタンスの中から服を漁っていた。ーー自分でも着替えられるところをお母さんに見せて、安心させたい。アルバスはそう思いながら、タンスの奥にある服を探す為に顔を突っ込んでいた。ガタガタと音が聞こえてきた為、何事かと思って母親が来た。母親はタンスの中から服を取ろうとしてるアルバスが目に入り、血相を変えながら慌ててアルバスに近づいた。「ちょっと!何してるのよ!!」血相を変えたまま、母親はアルバスに聞いた。「えっと……1人で服を着替えようと……」「何でそんな危ない事するの!?タンスに頭突っ込んで、窒息でもしたらどうするのよ!!」「怖い事しないで!!…もう!何でいつもそうなの!?」アルバスの母親は決して服を1人で着替える事に対して怒っている訳では無い。タンスに頭を突っ込んだ状態の
言われた事を言われた通りするだけ。この世には命令する者と従う者がいて、僕はただ命令に従う者。従って命を葬る者。そこに深い感情なんて無い。どうでも良い。全部どうでも良いから、自分で考える必要が無い。僕は今までそうやって生きてきた。そういう風に育てられてきたから。ギンジと合流したフィナはギンジの代わりに戦っていた。相手は特殊特攻部隊の部隊長、アルバス。アルバスはギンジと戦っていたにも関わらず無傷の状態であった。八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーの中で1番強いであろうギンジ。そんな彼がまるで歯が立たないのが見て分かる。その前にアルバスに付いていた特攻部隊の部下10人をギンジが倒していたとしても、その差はあまりにも大きかった。そしてフィナとの戦闘では。「ハァ…ハァ…。」フィナもギンジと同じでアルバスによってボロボロにやられていた。息を切らすフィナに対し、アルバスは全く息を乱していなかった。「まだやりますか?」アルバスは相変わらず無気力な感じで言った。そこには特別面倒臭さや怒ってる様な感情も感じられない、まるで機械を相手にしている様であった。息を切らすフィナは次元刀を強く握りしめ、構えた。「ー 時の断罪を受けよ。時の審判(クロノ・ジャッジメント)!」フィナは詠唱すると、周囲の時間が止まる。陰陽魔術の"陽"の時間を操る力であり、その中でも時間そのものを完全に止める事が出来る魔法。以前シルフでネルに対して使用した事があった。(第16話、18話参照)時間を止める時間が長ければ命を縮めるリスクがある為、それ程長くは時間を止める事が出来ない。だが、ここで出し惜しみすれば命は無いと思ったフィナはその力を使おうと決心したのだ。しかし。「…何で?時間を止めた筈なのに動けるの?」時の断罪(クロノ・ジャッジメント)の中であるにも関わらず、アルバスは白炎を身体に纏いながら普通に動く事が出来ていた。しかもその動きはフィナの縮地法による高速移動を上回り、時が止まった世界を普通に走って移動していた。フィナよりも速く移動するアルバスは一瞬で彼女の目の前に現れ、拳で彼女の鎧を殴った。拳には白炎が纏われていなかったが殴った事により、フィナの鎧はヒビが入りながら砕けてしまう。「グハッ!!」フィナはアルバスの拳の威力により、後方へと吹き飛ばされた。
痛い…痛いよぉ…。もうやめて…お願い。寂しいよ。…私を、1人にしないで!「…はっ!」ロゼアを凍り付かせた瞬間、エミルの頭の中に声が響いてきた。一体誰の声?もしかして…パリィィン!!そう思っていると、目の前のロゼアの方から氷が砕ける音が聞こえてきた。「嘘でしょ?…私が凍らせた氷の拘束を、腕力だけで解いたの!?」ロゼアは無理矢理、力尽くでエミルが凍らせた氷を砕いたのだ。「フゥ!!…フゥー!!…」先程までの狂気じみた笑顔が消え、荒い呼吸をしながらエミルの方を睨みつける。身体をやや前傾させながら両腕をだらんと下げている。睨みつける左目の瞳孔は相変わらず大きく開いていた。「フゥーーー!!!」ロゼアは一瞬にしてその場から消える。カキィィン!!!ロゼアのレイピアと、咄嗟に作ったエミルの氷の刀が衝突した音が鳴り響く。ーー速い!魔力で身体強化してるの?ロゼアはこの戦いの間、ずっと身体強化の魔法は使用していない。使用していたのは固有魔法である[共有(シェア・リンク)]と反(リバース)魔法である[再生(リジェネーション)]。しかし、ロゼアは本来自分の魔法頼りに戦わない。彼女の戦闘スタイル。それは。死なない不死身に近い肉体を持ちながら躊躇なく攻めてくる、特攻物理アタッカー。ほぼ不死身な上にまるでこの自分の命を顧みないこの戦いは、相手からすれば恐怖でしか無かった。「(マズイわ!…さっきまでとは別人の動きをするから、全然死角に入り込めない!このままじゃ…)」身体強化によりロゼアの動きが段違いに速くなり、エミルは彼女の死角に入り込めず正面戦闘が続いた。先程までベラベラと自分の愛憎に塗れた言葉を垂れ流してきたロゼアであるが、今はそんな事は言わず只ひたすらレイピアでエミルを突き刺しに来る。確実にエミルを殺しに掛かっているのだろう。しかし、どこか余裕が無い様にも見えた。「(何か逆転に繋がる道は…けど、彼女に攻撃すれば私にもダメージが…一体、どうすれば?)」「アハハハハ!!!もう終わり?ねぇ、ねぇ、ねぇ!?」優勢になり始めると、ロゼアの狂気じみた笑い声が響き渡る。そして。グサッ!!エミルの胸にロゼアのレイピアが突き刺さる。「アハハ!もう終わりね!」レイピアが突き刺さった瞬間、テンションがハイになっていたロゼアの左目の瞳孔が小さく
これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせ
この世界には悪魔がいました。 悪魔は夜にしか活動出来ないが生まれつき力が強く、人の心臓または目を好んで毎晩人を襲いました。 そんなある日1人の男が悪魔をこらしめました。 その男はこの国の王子様…否 この世で一番、悪魔に近くそして心無い男だった。 「…!はぁ…はぁ……何、今の夢。」 確か小さい頃読んでた絵本の内容だったけどすごく怖かったような… 「おはよぅ…」 「おはようミーナ。もう体大丈夫なの?」 「体?そういえば私、気絶してしまったんだね。全然覚えてないな」 昨日玄関前で気絶してからミーナの母親はミーナを家の中まで運びベットに寝かせたのだった。 一
10年後、人々は悲劇の国キュアリーハートをこう呼んだ。 赤い地獄(レッドヘル)と。 今では化け物が住処としているらしく人間の立ち入りを禁止した。 化け物は人間の心臓と目が好きらしくそれを取って食べるので人は化け物の事をまるで悪魔のようだと言う。 そして人間の心臓を求めて他の国へ移動する悪魔もいる。 しかしこの世にはそんな悪魔に対抗する力があり、それを人々はこう呼んだ。 ー悪魔祓い(デビルブレイカー)と。 「ねぇ、聞いた?隣の国でまた悪魔の被害があったらしいわよ?」 「またなの?もう何度目なの?」 「ほんと、いい加減やめてほしいよねー。どうせ悪魔なんて噂話でし
「ハァ……ハァ……。くそっ……!」 肺が焼ける。喉が血の味でひりつく。 少年は石畳に膝をつきかけ、歯を食いしばって体を起こした。 脚が、動かない。 抉られたふくらはぎから熱いものが流れ落ち、足を引きずるたびに肉が裂ける感覚がした。 ――空が、赤い。 夜空に浮かぶ月が、あり得ないほど真っ赤に染まっている。 その光に照らされた街は、血の匂いと焦げた臭いで満ちていた。 昨日まで、ここは平和だった。 魔法と品物にあふれ、誰もが当たり前のように笑って暮らしていた国――キュアリーハート。 なのに、深夜零時。 赤い月光が国を覆い尽くした瞬間、世界がひっくり返った。 家々から悲鳴が上が







